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さらに気になった「ハーフ・ブラッド・プリンス」のこと(2005/12/26)
 6巻の邦訳タイトルが改題になりました。『ハリー・ポッターと謎のプリンス』になった理由をあれこれ考えてしまいました。プリンスは苗字なので「プリンス」としか言いようがないと思いますが、"half-blood"はつまり半分の血ということなんですよね。プリンス家の血を半分継ぐものであり、さらにはマグルと魔法使いの間に生まれたという意味を含めているのだと思います。それを日本語にしちゃうと「混血」になるのですが、意味としては一致ではなく少々ずれがあることを強く感じました。そのふたつの意味を表現する適当なことばが無かったのでしょうか。一番気になるのはこの文章。
This Book is the Property of the Half-Blood Prince
"Harry Potter and the Half-blood Prince"ハードカバーUK版P183

「この本はハーフ・ブラッド・プリンスの持ち物だ」という単純かつ謎の文章です。こちらはどのように訳すのでしょうか。まさか「この本は謎のプリンスの持ち物だ」ではおかしい気がします。このことばがどう訳されるのか気になります。  
 プリンス家の血を半分受け継ぎ、マグルの男性と結婚したというスネイプ先生のこと、また気になることがでてきました。つまり、スネイプ先生はヴォルデモートと同じ「混血」だったわけです。同様な生い立ちをヴォルデモートに感じていたとは思いますが、「純血」の生まれではないことはスネイプ先生にとってコンプレックスだったのでしょうか? この魔法薬の教科書にこのように書き、自分がプリンス家の出であることをことさら強調するようにしていたことから考えると、少なからずコンプレックスを抱いていたように思えてしまいます。それに対してジェームズは「純血」の生まれでした。このこともスネイプ先生は気にしていたのでしょうか。もっとも憎み嫌う人物は自分と違ってクィディッチの才能に溢れ、人気者でその上「純血」の生まれだった――きっと意識していたのではないか、と思うようになりました。  スネイプ先生の子ども時代は5巻に垣間見ることができます。
鉤鼻の男が、縮こまっている女性を怒鳴りつけ、隅のほうで小さな黒い髪の男の子が泣いている……脂っこい髪の10代の少年が、暗い寝室にぽつんとすわり、杖を天井に向けて蝿を打ち落としている……
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』下巻 P269  

 両親の仲は決してよくはなかったという思い出にとらわれているらしいスネイプ先生の様子が伺えます。魔女の母親を怒鳴るマグルの父親という出来事はスネイプ少年にとって忘れられない苦い思い出なのでしょう。こうした思い出のほか、ホグワーツ入学前から大半の呪いを知っていたというその姿も、実はマグルの父親を持っていることへの否定的意味合いが含まれていたのかもしれません。ハリーは入学通知が来て初めて自分が魔法使いであることを意識しましたが、スネイプ少年はかなり早い時期から魔法使いとしての自己を意識し、その意識を高めていたのでしょうね。当初はマルフォイ家のような由緒ある魔法族の生まれなのかと思っていたのですが、そういう環境で育っていたわけではないようですね。むしろ、夏休みなどはあまりいい思い出がなかったような感じを受けます。スネイプ先生の母親についてもさらに興味が沸きました。どんな方だったのでしょうね。
6巻を読み終えて「ダンブルドアの死」 (2005/9/25)    
 シリーズ通してまさかダンブルドアが亡くなるなんて、予想すらしていなかったことが起こりました。スネイプの唱えた呪文は紛れもない「死の呪い、アバダ ケダブラ」でした。そのページを読んだ瞬間、嘘だ、きっとこれこそダンブルドアを死んだと思わせておくスネイプの作戦だ、と強く思い、望んでいる自分がいました。しかし、ダンブルドアの亡骸が確かに存在していました。そして何といっても死を実感させたのは校長室にはもうダンブルドアの肖像画が用意されていることでした。その肖像画でしかもうダンブルドアには会えないのだ、たとえその肖像画が何らかのことばを発したとしても、それは生きたダンブルドアではなく、記憶の残像のようなものになっているんだろう……。この肖像画を思うたびに涙が出そうになります。次の巻でダンブルドアの肖像画と会話をすることがあるのでしょうか。なんだかもうそのことを考えると余計に悲しみを感じます。シリウスの死のように、ふっつりと切れてしまったほうが、ショックは少なかったのではないかと思います。繰り返してダンブルドアの死を確認させるために、亡骸、血、肖像画、そして葬儀と物語が続いていくことで、魔法は万能ではないんだと感じました。確かに呪文は本物だったんだ。そしてスネイプがその呪文を放ったのだ、どんな理由があってもスネイプこそがダンブルドアを殺した人物なのであり、そのことは変わらない事実であると。ハリーと同じように、物凄くスネイプに対して憎しみを感じました。ダンブルドアを殺したのはスネイプなんだ、今までスネイプのことを信頼し、そしてきっと騎士団の側にたっているはずだと信じていたのに。裏切られたのだ、あの「破れぬ誓い」はマルフォイがダンブルドアを殺すことだったのだ、それを代わって行なう心積もりはずっとあったのだと。そしてさらにその場でスネイプを目撃した人たちの話、騎士団に加勢すると見せかけて、ドラコの元へ駆けつけたことがわかると、物凄く悔しく、憎らしさがあげてきました。ダンブルドアが死の原因となったスネイプは絶対に許さない! そんなことばかり考えました。27章から29章を一気に読み進め、スネイプをハリーと共に追ったものの逃がしてしまったことが残念でならなかったのです。
 ダンブルドアの死は予想していなかっただけに、今後の展開もこれまでのような学園生活を送るわけにはいかないような気がします。先行きが不安になりました。まだ残っているHorcruxは本当に破壊することができるのでしょうか? ハリーを強力にサポートしてくれる存在になるのは誰なのでしょうか。それとも一人で打ち勝つことができるのでしょうか。魔法省はあてになりません。他の騎士団のメンバーもダンブルドア亡き後、誰が指揮をとるのでしょうか、具体的に思い浮かびません……この先「絶対に勝つのではないか、それが物語だから」と思ってみても、まったくイメージが沸かなくなりました。学校はどうなるのだろう? 学校へ行って授業を受けることにどれほどの意味があるのだろうか? さらにはダンブルドアのいなくなったホグワーツ、スネイプの去ったホグワーツには何が残っているのだろうと。
 ただ、ダンブルドアは常に死を覚悟し、自身を死すべき存在だと理解していたのだと思います。死を恐れ遠ざけるためにあらゆる方法を用いたヴォルデモートとは違うと思うのです。5巻の予言をよく考えてみたときに、ダンブルドア自身は自分がヴォルデモートを倒す存在ではないということをずっと感じて準備していたのだと思いました。ダンブルドアはヴォルデモートを倒す可能性をもった唯一の人物ハリー・ポッターのために全力を注ぎ、そのために自身をも犠牲にしたように思います。物語の展開として、ダンブルドアがいない世界で本当にハリーがヴォルデモートと対決できるのかどうかが不安に感じるのですが、ダンブルドアがいないからこそ、ハリー自身の力が試されるのかもしれない、そしてハリーが大人になるのかもしれない、そういう気持ちもあります。
 さようなら、ダンブルドア。物語の中であなたの存在ほど読者に勇気と希望を与える人物はありませんでした。あなたのことば「信頼」というキーワードがこれからの魔法界でよいいっそう強固な絆を生み、そしてヴォルデモートに対決する力となることを願います。安らかにお眠りください。
スネイプ先生の真の姿とはいったい?(2005/9/25)    
 今回、こうしてスネイプ先生は死喰い人の仲間として行動をとりました。果たしてそれの意味するところは、本当は「死喰い人側」の人間であったということなのでしょうか? 最初にスネイプ先生がダンブルドアに向けて死の呪いでダンブルドアを殺してしまった部分を読んだとき、本当にスネイプ先生のことを憎みましたが、一晩絶ってみると、それについて疑問を感じるようになりました。スネイプ先生はあくまでドラコ・マルフォイの代わりにダンブルドアを殺したのです。殺そうと思えばすぐにでもホグワーツにいるスネイプは殺せる立場にいたのです。それをドラコ・マルフォイをサポートするために待っていたというのはスネイプ先生の真の姿を探る手がかりになりそうな気がします。6巻のはじめのほうでどのようにしてヴォルデモートからの信頼を得て、いかにしてダンブルドアを欺いてスパイをしているかについての説明がありました。彼は決して逃げ出したわけではないことが判明したのです。風向きを見て的確な判断をしながら死喰い人の側に役立つ人物として印象付ける機会を狙っていたのです。ダンブルドアは終始スネイプ先生を信頼していました。その二人の間に何が起こったのか、なぜダンブルドアはスネイプ先生を信頼していたのかは結局わかりませんでした。その信頼関係は最大の極秘事項であり、ダンブルドアは信頼していることを公言しているものの、理由を誰にも話さないということには意味があるのではないかと感じます。スネイプの任務は終始敵を欺き、敵に信頼させることだと思います。そのことをもっともよく知る人物ダンブルドアはたとえ自分の命が引き換えになったとしても、スネイプの任務遂行、そしてハリーがヴォルデモートに打ち勝つための影の役割を演じることを願ったと思うのです。ダンブルドア以外の誰からも信頼を得ることはできません。辛く孤独な任務です。そしてダンブルドアを殺すという汚名まで引き受けたのではないか、と思うのです。ダンブルドアはマルフォイの任務を把握し、最終的には自分の死を覚悟していたように思えます。ハリーが心配してあれこれダンブルドアに言っても、ダンブルドアを殺す計画だということをハリーが知ったら、それを阻止するためにハリーがマルフォイとスネイプを殺してしまったかもしれないし、そうなって欲しくはなかったのではないでしょうか。だからこそわざと冷たくあしらったのかもしれない、と思っています。
 もし、あの場でスネイプ先生がダンブルドアを殺さなかったとしたら、スネイプ先生の死喰い人での立場は非常に危ういものになります。しかし、ダンブルドア亡き後、死喰い人側でスパイ活動をして騎士団にどのように役立つか?といわれれば難しいのですが、最終的な目標である「ヴォルデモートの消滅」のために死喰い人側の役割を把握し、最終決戦ではハリーに有利になるような計らいをするために孤独な任務を続けるのではないか、と信じていたい気がします。そうじゃなかったら、許せないなぁ、やっぱり。
 スネイプ先生が本当はどちらの側についているか、また謎が深まった巻です。ダンブルドアがスネイプ先生を信頼する唯一の人物であるように、スネイプ先生が唯一心を許し信頼した人物がスネイプ先生なのだと思っています。しかし、7巻目を読み終わるまではまだまだ謎多き人物であることは確かです。