私が痴漢に目覚めたのは高校生の時だったかもしれない。
小学生くらいのときから興味を持っていた大人の世界。
物心ついたころから、私の属性はMだった。
けれど、それが私にとっては、当たり前の事だったのだ。
そして私は、痴漢という状況において激しく欲望に火がつく。
――私が初めて痴漢に遭遇したとき。
痴漢は、事情を飲みこめていない私をいいことに、制服の上からどうどうと胸を揉んでいた。私はどうしてか、文句をいうこともなく、身じろぎすることも無く、そのまま目的地で電車を降りた。
その痴漢が、名残惜しそうに最後に私の胸を掴んだのを覚えている。
次の痴漢は、私と同じ電車に乗って同じ方向へ向かっていた、高校生だった。
制服を着たまま、興奮した様子で私を触っていた。
(もし私が騒いだら、この人はどうなるんだろう?)
私はそう考えて、やはりその時もされるがままになっていた。
今思えば、私はいつも相手の事を考えて、行動していたようだ。
その高校生は制服の上から私の体を触り、満足したように電車を降りて行った。
彼の人生の中で、私は何人目の女性だったのだろうか?
ふとそんな風に思う事もある。
そこまでは、私の理性はしっかりと在ったのだ。
覚えている。
三番目に会った痴漢が……私を狂わせた。
ごく普通の、サラリーマン。20代くらいだったように思う。
彼は自然に私へ近づき、自然にスカートの中へ手を滑り込ませた。下着一枚上から行われた行為に、私は息を荒くした。
ほんの10分ほどの行為で、私は一線を超えそうなほど、その男の技に酔っていた。今考えると、彼がしたのは痴漢と言うよりも愛撫だったようだ。男の手が気持ちいいと、その時初めて思った。
そのときから私は、痴漢という特殊な存在に惹かれ続けることになる。
今日も私は、わざと混雑した列に並んで電車を待っていた。
わさわさと電車に乗り込むより、こうして並んで待っていた方が、私を目当てにする男が近寄ってくるのだ。
案の定、怪しげな動きで男が私の後ろに入り込む。
私はドキドキしながら……、というよりも、期待に胸を膨らませながら電車の到着を待つ。
沢山の通勤客に押され、私は仕方なくドアの近くの手すりにつかまった。
――本当は、全て計画済み。
その位置が一番、男と私の空間を作りやすいのだ。
そしてドアが閉まるころ、私の後ろにぴったりとくっつく気配があった。
(今日も――)
私は通学の数十分の時間を、趣味に費やす。
男はまず何気なく手を動かし、こちらの様子を伺う。
私は何も抵抗せず、相手の動きを待つ。しばらくすると、男はそっと私の体に指を喰い込ませる。
意図をもった接触。
俺は今からお前を触るんだ、と男が宣言しているようにも思える。
もちろん私は、何も動かない。すると男は、安心したように指を私の体へ這わせ始める。
(なんで、もっと早くしてくれないんだろ……)
私はもう、そのときには待ちくたびれていた。
スカートの中へ手をいれるでもなく、服の上から胸や性感帯への鈍い刺激。男が勇気を出せないうちに、私は電車を降りる時間になってしまう。
(まただ……、もう、触る気がないなら触らなければいいのに!)
私はトンネルの中、鏡越しに男を睨みつける。
男は多分、痴漢したことを怒っていると思っただろう。
そんなことを繰り返し、私は……
自分から誘う方法を、考えるようになった。
そして、あれは大学生になったころ。
私は出来るだけ薄い生地のロングスカートをはき、薄く緩めのTシャツを着て電車に並んだ。
今日は大学は自主休講。
出来るだけ混んだ時間に、なるべくドアの開かない、遠距離まで行く電車を選ぶ。
何度目かの賭けだった。
衣装もいつも変えて、相手の出方を見た。ミニスカートでは意外と触ってくる相手がいないというのもわかった。
男たちは、自分がしている作業が出来るだけバレない服装を好んでいるように思える。だから私は、わざと手の入りやすい格好を選び、薄めのTシャツに透けるような濃いブラをつける。
下着は、両側を引っ張れば解けるひも付きのもの。
もちろん、素足だ。
この格好が今までで一番、痴漢にあう確率が多かった。
けれど、まだ、服の上から触られた事しかない。
(今日こそ)
私はFカップの胸が目立つよう、特に姿勢を良くして電車に乗り込む。
そんな私を、強い力で押す男がいた。
(……来た?)
私はその力に全てを委ね、男の望む方向に歩き出す。
すると、男は私を折り畳み席のある、ドアのそばへと押し込んだ。そこは、空いた時に折り畳み席が出せる分だけのスペースがある場所だった。
ドアの開け閉めにも出入りすることなく、席に座る人からも、立っているから人も、ほぼ視角になったコーナー部分。
私の胸が、期待に跳ねる。
――ドアがゆっくりとしまった。
後ろの男にも聞こえそうなほど、私の心臓が鳴る。
そして私の祈りを聞いたかのように、男の手が私の太腿を撫でる。
(来た……!)
私は喜びに声をあげそうになった。
男の手はゆっくりと、しかし確実に意図を持って私を触っている。
もちろん、私は抵抗などしない。
私の頭は『どうしたらこの手が早く私を辱めてくれるのか』でいっぱいだった。
けれど、どうしていいのかわからない。
考える私の足の間に、指がゆっくりと入り込む。薄いスカートの生地は、男の手の動きや温度まで私に伝えていた。
その熱が、私の体を溶かす。
(もっと……、早くして)
私はどうしようかと思い悩んだ末、腰を動かして男の指に体を擦り付けた。
(お願い。気付いて)
男の手が、力を籠めて私の体に沈む。私はその指を、もっと的確な部分へ連れて行こうと、腰を浮かせる。
男の指先が、私の敏感な部分に触れた。
(あ……)
私はその感覚を、全身で愉しむ。
すると男は、その場所を何度もなぞり始める。なんとも歯がゆいその力は、私をいらだたせるばかりだ。
(なんで……もっと、早くしてほしいのに)
自然、私は男の指の動きに合わせて体を揺すってしまう。
と、男は私から手を離し、代わりに自分自身を押し付けた。
(ああ……っ、熱い。大きい。固い)
私は理性を忘れ、男の物に体を押し付ける。
互いに、熱くなった部分を押し付けるように腰を動かした後、男の手が動きを変えた。
(あ……っ)
男の手がTシャツのすそから滑り込み、ホックをはずす。
ふわりと自由になった胸を、男の手が持ち上げるように掴む。もう一つの手も、当たり前のように私の反対側の胸の乳首を探し当てる。
(う……)
私の頭が、くらりと揺れた。
男の手は遠慮をせず、けれど大切なものを扱うように、しっかりと乳房を揉みほぐす。
男の指先が私の乳首を探り当てるたび、私は小さくため息をもらしていた。
乳房の中に溜まっていた欲求不満が、ひとつずつ絞り出されていくようだ。きっと、今の私の顔はとても気持ちよさそうな表情をしているに違いない。
まるで全身のマッサージを受けているような、体がほどけるような心地良さ。私は無意識のうちに、男の腕に自分の手を重ねていた。
ちいさく、男の笑い声が聞こえた気がする。
片方の手を胸に残したまま、男は私のスカートをゆっくりと捲り上げ始めた。
(あ。この人、してくれるかも)
男の手が動きやすいように、私は体に力をいれて、自分の前に空間を作り出す。捲り上げた隙間から、男の手が簡単に私の下着へと手を伸ばした。
(ああ、ほんとに……)
私は喜びに目を閉じる。
男は迷いなく、下着の上から私のその場所をなぞり始めた。
自分でも気持ち悪いほど、そこは濡れている。痛いくらいに、自分の突起が熱く固くなっているのが分かる。
男にもそれはわかったのだろうか。
的確に、その場所を男が強く指で押し込む。私は全身の痺れに、思わず力を抜いて男に寄りかかってしまった。
(いけない、ちゃんと立ってなきゃ、やってもらえないかも)
そう思った私は、手すりと折り畳み席の所に捉まって、自分の体を支える。男の手がゆっくりと私を焦らすように、ぬめりを確かめている。私はもっとそれを味わおうと、自分で足を広げて立ちなおす。
小さい声が、私の耳元でした。
『もっとしてほしい?』
私はすぐに小さく頷いて返す。
男はそれを見ると、確信を持って下着の紐を片方だけ解く。
私の下着は、紐を一本片足に絡めたまま、だらりと垂れさがる。
(ロングスカートだから、下着は見えないよね)
今さら私はそんなことが気になり出す。
そんな私の目を覚ますように、男の指先がつるりと滑り込んできた。
(あ……っ!)
私は今日の日の為に、その場所の剃毛をしていた。
男は驚いたように、手のひらでその部分を包み込む。男の左手が私の乳房から離れ、後ろからスカートの中へと侵入する。
「……悪い子だ」
小さなつぶやきが、耳に残る。
それを掻き消すように、男の手が私の突起と、淫らに開いた穴を捉える。
「あ……」
突起はひどく優しく、けれど淫らな花弁は責めるように深くなぶられる。
私は耐え切れず、男の腕を強く掴んだ。
「もういくの? 早過ぎない?」
電車の音に掻き消えそうなほどの嘲笑の声が、私を辱める。
私の体は、その言葉に強く反応して燃え上がる。
「あ、っ……!」
(も、もう、無理……っ)
ぬるぬると動く指の淫らさに、私は耐え切れなかった。男の指を締め付けるように銜え込み、私ははるか高みへ上り詰める。
(い、くっ……)
全身から汗が吹き出し、息がはずむ。体中から意識が解放されるような感覚に、私は身を任せる。
(ああ、やっと、痴漢で……っ)
初めて、痴漢の指で最後まで味あわせて貰った私は、強い悦びにうち震えた。私は心の底から、痴漢に感謝をする。
きっと、私を見ていた男の人がいたなら、絶対に……私の絶頂を見てとっていただろう。
それくらいに深い快感の波が、私を洗い流す。
「そんなに締めて……」
男は私の失敗を責めるように、更に指先へ神経を込める。
もはやどろどろにふやけた男の指が、もう一つの急所へと伸びる。
(あ、そこは)
嫌いではない。けれど、理性を保つ自信が無かった。
抵抗するまもなく、濡れた指先が後ろの穴をほぐし始める。もはや声を出さないのが精いっぱいだった。表情を抑えることも出来ず、私は下を向いて顔を隠す。
三か所の弱点を、男の指が容赦なく撫でまわす。
その指先が最後の砦を破って僅かに体内へ差し込まれたとき、私は二度目の高みへと登らされた。
男の片手はそれからもう一度私が蕩けるのを見届け、忘れさられていたような乳房へと舞い戻る。もう一つの手が私から離れて、しばらくの間が空いた。
(ああ……そろそろ、この人も電車を降りるのかな)
私の中の理性が、少し姿を現す。
(……寂しいな)
思った通り、電車のドアが開いた。
2011/10/24